射精障害について

射精障害も悩む男性は少なくありません。しかしその内容についてはいくつかに分類されます。

  1. ➊ 射精する精液の量が生まれつき非常に少ない(1.5ml未満)。
  2. ➋ 射精する精液の量が昔に比べてかなり減少してきた。
  3. ➌ 自慰行為では射精できるが性行為での射精がむつかしい。いわゆる膣内射精障害。
  4. ➍ 射精まで至らない、または射精に至るのは大変時間がかかる。遅漏と言われる状況。
  5. ➎ 射精までの時間が非常に短い。早漏の状態。

などに分類されます。

先天的に精嚢(精液を貯蔵する臓器)が発達不良の場合や、精管の奇形など伴う場合に、生まれつき射精の量が非常に少なく、また精子の数にも問題があったりする場合があります。このような射精障害の場合には、自然妊娠しにくいケースも多く、精子採取手術と顕微授精が行われたりします。また精嚢の先天的な形成異常自体は、治療はむつかしいものがあります。➊のケースであればこのような疾患が考えられます。また射精管や前立腺の解剖異常や閉塞などの異常も考えられます。画像検査などで評価することとなります。

また後天的に射精量が減少するケースも少なくありません。精液産生の能力の低下も懸念されます。また射精管などが後天的に炎症や腫瘍性変化などで閉塞することや、精嚢内部への内出血の後遺症などから射精する精液の減少が起こる場合もあります。➋の場合にはこのようなことが考えられます。原因疾患の除去などを中心に加療していきます。

また早漏や遅漏の問題も、大変悩ましいことです。背景には精神的な要因もありますし、射精の神経が糖尿病などで二次的に障害されて射精しにくくなるケースもあります。早漏の場合には、包茎や亀頭部の刺激になれていない男性の場合が悩むことが少なくありませんので、原因疾患除去も進めていきます。また薬物である程度射精をしにくくしたり、勃起の時間を稼ぐためにED治療薬を服薬することもあります。よく相談して一緒に治療していきたいと思います。ご相談ください。

射精障害のイメージ

そして膣内射精障害も多い悩みの一つです。自慰行為では問題なく射精できる症例が多いです。そしてその自慰行為にあまりに慣れてしまったため、自慰行為以外での性的感覚が鈍くなっていることが割と多いので生活習慣や自慰行為の習慣見直しもします。また膣内の刺激に慣れていない場合もあってある程度の経験の必要性もあるとも考えられます。精神的な側面も十分重視しつつ、患者さんのそれぞれの悩みに向き合い治療を進めていきたいと考えております。

射精障害の治療について

射精障害については、心理的な側面も絡んでいますので、治療がむつかしい場合が少なくはありませんが、以下のような治療の方法があります。早漏など過敏な反応が仮性包茎などの原因が疑われる場合、適切に包茎手術を行い、陰茎の過敏性を改善する方法もあります。また早漏での内服薬の治療の場合、アルファブロッカーと言われる、前立腺肥大症の治療薬を一部使用したり、緊張緩和などの目的で抗不安薬を使用したり、SSRIと言われるうつ病などの治療薬を用いる場合も時にあります。診療において皆様とじっくり相談の上、各種方法を考えていくことになります。また難治性の膣内射精障害も少なくはありませんが、お子様を望まれている場合などでは、人工授精などの生殖補助医療を行うことを推奨する場合もあります。各症例に応じてお悩みを傾聴しつつ対応して参ります。

膣内射精障害について

膣内射精障害とはどのようなものか?

膣内射精障害とは、性行為での射精が不可能な状況であり、近年外来での相談は非常に多い状況となっています。潜在的にはかなり多くの患者さんがいるものと推測されます。
個人的にはこの用語ではなく、「性交射精障害」と言ったほうが適切ではないかと考えています。射精に至るためには、複雑な神経系の働きが必要です。糖尿病合併症や脊髄・脳神経障害などのための、本当の意味での射精障害の症例よりも、はるかに多くのいわゆる性行為時の射精障害の症例(特に若い男性)に遭遇します。
射精の分類としては、①性交射精 ②口淫射精(いわゆるオーラルセックス) ③自慰射精(マスターベーション) ④手淫射精 ⑤夢精(睡眠時の無自覚の射精)などがあると考えます。そしてこれらの一定の条件下であれば射精は可能であるが、他の条件下であれば射精ができない、そういった症例が少なくないということです。

いわゆる膣内射精障害の症例の場合、多くの共通項としては、下記のようなものがあります。

❶ 特殊な、不適切な自慰行為を長年習慣にしている。
これは、いわゆる「床オナニー」など言われる伏臥位で陰茎を圧迫する圧力で性感を得て射精に至るもので、不自然な非常に生理的ではない陰茎部への刺激が恒常的に反復して行われることとなります。包皮を引っ張る「皮オナニー」や強く締め付け、絞扼するように陰茎を把握する「握りオナニー」もその一種です。思春期以後同じパターンでの自慰のみの症例が多く、性行為体験より5~20年も前からこのやり方のみで射精を繰り返しているケースが多いです。つまり、特定の自己流の刺激のみ、射精に至る神経系の回路が完成している状況と考えられます。したがって通常の性行為での膣内で感じる性感では射精までの快感が得られない状況になっているのです。
❷ 射精の際に特殊な体位でないと射精できない。
これは性行為での体位ではなく、射精時に両方の下肢をそろえてまっすぐ伸ばす体勢でないと射精できないなどのケースがあります。ある意味不適切な自慰習慣とも言えますが、通常の性行為では、非常に取りにくい体勢であり、射精までの性感が得られないことになってしまいます。
❸ 性行為、セックスでは射精しないといけないと頑なに思い込んでいる。
つまり、射精ができないと人間失格かの様に、性行為で射精できないことを極めて重要視している方も多いのが特徴です。
❹ 赤ちゃんが欲しいけどタイミングの日に膣内で射精できないと赤ちゃんが絶対できないと思っている。
このような症例では、人工授精など、あるいはシリンジ法、スポイト法などの代替的精子注入法で妊娠が得られることを知らないため、射精が至上命題のごとく感じているのです。

以上の要素が、特に多くみられる膣内、性交射精障害の患者さんの特徴です。

治療としては?

残念ながら、飲めばすぐに射精できるような薬は現在では、まだありません。薬物治療も少しむつかしい状況です。まずは、射精ができなくても命に危険が及ぶわけでもなく、緊急事態でもないとある意味悠然と構えることが必要です。射精は複雑な神経作用から発現されるもので、射精しようと緊張すればするほど、逆に射精できなくなるものなのです。また性行為の目的で射精が全てでないので勃起が得られ射精できなくとも性交ができればそれで一旦は良しと満足することも必要です。そして挙児希望の場合には、性交射精できなくとも人工授精などに円滑に移行する選択肢も全く安全で良い方法があると理解することです。さらにはパートナーはじめ周りの協力と理解も必須です。射精できないことを全人格的に否定するようなこともなく、温かく見守ってください。またED薬を使って、十二分な勃起を持続されることも補助的に非常に有効です。そして不適切な自慰行為も制限したり、一切やめてしまうくらいの荒療法も時に性感のリセットの意味で必要かもしれません。