精索静脈瘤の各種手術治療の中でも、安全性が高く治療効果も高いと考えられるものです。局所麻酔でも施行可能であり、当院では全例この手術術式、局所麻酔にて、精索静脈瘤治療をしております。半日程度の休暇を取れれば十二分に日帰りの外来手術で対応可能です。
健康保険適応の手術療法であるため、通常の健康保険適応の料金では、片側の場合で約42,000円程度、両側で約73,000円程度となっております。(※2019年時点の料金概算です。他薬剤費などが調剤薬局にて必要です)
以下におおむねの手術の流れを説明していきます。
手術の流れ
<手術当日>
手術当日の体調のチェックと最終的な同意書の確認などを行います。
術前にお会計や処方箋発行など行い次回の予約も済ませます。
処置室に入室します。
バイタルサイン(血圧 体温 脈拍など)を測定・確認します。
患者さん専用の鍵付きロッカーがありますので荷物を入れて手術用の衣類にお着換えしていただきます。靴下は希望があれば着用のままで大丈夫です。
アクセサリーはすべて外します。眼鏡やコンタクトはどちらでも構いません。
手術部の毛の処理をします(術前に自宅ですることをお願いしておりますので確認作業です)
手術部の切開する場所に麻酔薬のシールを張り付けします。
点滴確保、鎮静薬の筋肉注射など手術の前投薬を行います。
看護師から手術前後の生活指導を聞いてもらいます。
手術室入室し手術を行います。
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<手術の開始>
- 局所麻酔薬によって適切に手術部位の鎮痛処置をします。しかし触った感じや精索を引っ張るときのけん引される感覚は多少残ります。
- 陰嚢の上の方に1.5cm~2.0cmくらいの非常に小さい傷を縦に切開します。
(吸収糸で丁寧に埋没縫合するので傷跡はかなり綺麗になってわかりにくくなることが多いです)
- 精索(精嚢に向かう動脈・静脈・リンパ管などの集まった束で15ミリほどの直径)を露出します。
- 顕微鏡で手術します。大切な動脈やリンパ管や神経は温存して傷つけずに、静脈瘤の異常な血管(内精索静脈)のみ処置(低位結紮)をして精巣に古い静脈血が逆流しないようにします。
- 止血確認して傷を閉じて終了です。
- 当院では精索静脈瘤の処置の際、挙睾筋、リンパ管、精索周囲の陰部大腿神経、動脈、リンパ管について温存するよう心掛けています。静脈瘤以外の大切な組織は全て傷つけないように最大限の注意を払います。
[ 手術時間 ]
精索の血管の数、走行、皮下の脂肪量、麻酔薬の効き具合などで左右されます。
通常は片側のみで40分程度の手術時間、両側の場合で70~80分程度の手術時間で済むことがほとんどです。
※手術中に、傷痛みや陰部の不快感など時に起こりますが、その時は休憩しながら、患者さんのペースで手術を行います。
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<手術の後>
手術室横の回復室にてゆっくり安静に休んでいただきます。多くの症例が10-15分程度休憩してから、傷の確認、痛みの確認などおこなって、元気に帰宅されることがほとんどです。
手術の合併症について
- 内出血(創部から陰嚢にかけての皮下出血が原因):0.5%以下
- 傷の感染、化膿:まれです。
- 精巣萎縮(精巣が小さくなる):まれです。
- 陰嚢のむくみ:これはしばしばみられます。少しむくんだ感じでほぼ全例2週間程度で自然治癒します。体への問題はありません。手術の自然な影響のためのむくみです。
- 傷の痛み:これは軽度ですが数日から数週間 個人差があります。
手術後の経過観察について
約3~4か月すると70-80%の症例で精液の検査結果が改善します。この時期に精液検査の再検査が必要です。最低でも1年くらいは経過観察が必要です。残念ながら検査結果があまり変わらない一部の症例には薬物的な治療も追加して経過観察となります。