膀胱炎について

膀胱炎イメージ

膀胱炎は、よく耳にする病気の名前です。でも膀胱炎にも少し種類があることはご存じでしょうか。
膀胱炎は、一般的に皆様のイメージする「急性膀胱炎」がまず多くあります。そして、慢性的な基礎的な疾患のもとで治りにくい経過をたどる「慢性複雑性膀胱炎」があります。そして放射線治療の後遺症や、ウイルス感染などのために膀胱炎が起こり、肉眼的に強い血尿が伴う、「出血性膀胱炎」があり、最後に、これら三つの感染症主体の膀胱炎と少し系統の異なる、「間質性膀胱炎」といわれる膀胱の粘膜や粘膜下層の炎症性障害から起こる、難治性の畜尿時の痛みや頻尿などを伴う膀胱炎があります。おおむね膀胱炎は、大体は、この四つに分類されます。そして何より、通常膀胱炎と言えば、最初にでてきた急性膀胱炎、あるいは単純性膀胱炎のことであると言えます。

まずメジャーな急性膀胱炎について述べたいと思います。症状としては、排尿時の痛み、排尿後のしみるような膀胱の違和感、痛み、残尿感、切迫性の尿失禁などいくつかのものが主訴としてあります。時には血尿もありますし、おしっこの後に陰部清拭でティッシュに血液が付着するなどの訴えもあります。膀胱炎は、女性に多い疾患で、患者さんの多くは女性であり、かつ、年齢的には性的に活動性のある年代の方が多い傾向があります。
原因になるバイ菌は、大腸菌が70~80%程度で最も多く、他に腸球菌やクレブシエラといった細菌があります。いずれも自己の消化管の菌であり、肛門周囲から、膣前壁、外尿道口周囲などに菌が伝播し繁殖して、尿道から侵入して膀胱内部で繁殖して急性膀胱炎をおこします。女性の尿道は男性よりかなり短いのでこのような菌も膀胱に侵入しやすいから、女性に急性膀胱炎が多いのです。また膣の正常細菌叢が活動していれば有害な菌の除菌作用もあるのですが、これら粘膜の免疫防御が弱っているとなりやすく、またトイレの排便などの後の陰部の清拭の仕方や癖によっても肛門周囲の菌を尿道近くに広げてしまう原因になっています。またトイレを必要以上に我慢したり、膀胱の内部に長いこと同じ尿をため込んでいると細菌の繁殖する時間を与えてしまいますので、このような生活習慣や職業習慣の場合にも急性膀胱炎になりやすいと言えます。

急性膀胱炎の予防のポイント

  1. しっかり水分を摂取して尿量を多くして菌を洗い流すようにする。
  2. 尿を我慢しすぎないこと。
  3. 性行為の後などは、膣や外尿道口周囲を清潔に保つように心がけること。
  4. 排便の後などは、清拭の方法に気をつけて、肛門周囲の菌を周りに広げないように工夫すること。
  5. 全身の疲労は膀胱炎はじめ各種感染症の原因になります。働きすぎ、睡眠不足、お酒の飲みすぎなど全身の免疫力の落ちる生活習慣は改めましょう。
  6. 医師の指示に従って抗菌剤はしっかり内服をして、症状が軽くなったからというだけで治療を自己中断しないようにしましょう。

そして、いったん、膀胱炎になってしまったら、適切に受診して、抗菌剤の治療をしっかり受けて、完治したこともきちんと確認しましょう。また膀胱炎では通常発熱はありませんが、膀胱炎の経過中に発熱があり、全身倦怠感などの症状があって具合がすぐれない場合には急性腎盂腎炎を起こしていることもしばしばあります。その際はより強い抗菌剤の点滴投与などが行われる必要性も出てきますので、このような症状の場合には早めに受診しましょう。
またほかに大切なことは、妊活の最中であったり、妊娠中の女性が膀胱炎になった場合ですが、よく「抗菌剤飲んで大丈夫ですか?」と聞かれる場合や「お薬や使いたくない」といわれることが時にありますが、尿路感染症を放置しておくほうが、妊娠母体や胎児そして妊活中でもマイナス、つまりデメリットがはるかに大きいと言えます。通常このような女性の用いる抗菌剤は、妊婦や胎児への危険性は極めて少ないものを選択しますので、薬を飲むことを恐れる必要はほぼないと言えます。そして膀胱炎がこじれて腎盂腎炎になった場合には流産の危険性も低くありませんし、妊活どころではなくなってしまいます。まずは尿路感染症をきちんと治療することが、安全な妊活と、妊娠中の生活のために肝要であると覚えておいてください。

おしっこに関する、些細な症状、残尿感や排尿の違和感や血尿など、気になれば気軽にまず受診して相談に来ていただければ幸いです。